「小さな物語」Vol.1 「隠れ家カフェ ローズ亭」榎本みどりさん – 多言語事業「ことばし」オフィシャルサイト

「小さな物語」Vol.1 「隠れ家カフェ ローズ亭」榎本みどりさん

エッセイ

美しい里山が残る、東京都稲城市上谷戸。ここに、「隠れ家カフェ ローズ亭」があります。江戸時代の末期に建てられた長屋を改造したカフェを運営するのは、オーナーの榎本みどりさん。元々は「その日に一人でもいいから、来てくれたら」との思いでオープンしたカフェですが、今では午後の早い時間にケーキが全て売れ切れてしまうこともあるほど、人気のカフェになっています。

「うちは長居、大歓迎なのよ。」と語る榎本さん。常連さんからは、親しみを込めて「みどりさん」と呼ばれています。

榎本さんがカフェを始めるきっかけになったのは、他でもない、自然が豊かに残る稲城市上谷戸の環境。お嫁に来た時に、近隣にお店がないことから、自分でパンやお菓子が焼けるように、お菓子教室やパン教室に通ったそうです。

お菓子やパン作りの他に、榎本さんが趣味で続けていたのが、庭園造り。そんな時に、亡くなってしまった親しい友人のご主人からバラの鉢を譲り受け、友人の想いに応えるためにも、本格的にバラの栽培に取り組むように。

バラ栽培の教室にも通い続け、やがて榎本さんの庭園はバラが美しく咲き誇る庭園として広まっていきます。一時期は、バラを見るために、一週間で約180人ものお客さんが訪れたそうです。お客さんに、ケーキやお茶を振る舞ううちに、榎本さんは「180人のおもてなしができるなら、カフェを開けるかもしれない」と思うようになります。

決意が揺るがないように、親しい友人や家族に「一年後にカフェを開く!」と宣言した榎本さん。友人や知り合いの協力もあり、わずか一年で「隠れ家カフェ ローズ亭」をオープンさせます。

胡桃の木から作ったカウンターテーブルやバラをモチーフにしたステンドグラスなど、カフェには、様々な人々の「好意」が詰まっており、温もりのある空気が流れています。

榎本さんが作るケーキは全て自家製。ケーキごとにスポンジを変え、「完全無添加」なケーキ作りを心掛けています。「本当にいい材料を使えば、飾りはいらない。味も薄くてもいい。」というお菓子教室の先生の言葉を大事にし、一つ一つ大事にケーキを作っています。

「榎本さんから読者に伝えたいことはありますか」と聞くと、まるでお母さんのような、温かく、芯の通った強さを感じさせる声で語ってくれました。

「今になって思うことはね、このカフェは私の不自由から全て始まったってことなの。不自由さがなければ、今の私はない。全て、その時は大変なものよ。でもね、今は全てつながって、『人生には無駄なものが一つもない』って思えるの。だからね、今の若い人達が、『大変だなー』って思っている時、『絶対何かにつながるから』と伝えたいわ。」

人生を一生懸命に駆け抜けた人にしか発することのできない、重みのある、温かいエール。

最後に、「榎本さんはどのような想いでカフェを運営されていますか」との質問には笑顔で、こう答えてくれました

「『今日はいい日だなー』とカフェに来てくれて思ってくれる人が一人でもいたら、私は『カフェをしていて良かったなー』と思う。それが私の幸せ。」

「隠れ家カフェ ローズ亭」。そこは、お客様と榎本さんを繋ぐ、「想い」が醸し出す温かさが溢れる、心休まる空間でした。

隠れ家カフェ ローズ亭
ウェブサイト:
住所:〒206-0824 東京都稲城市若葉台1-8-1
TEL:042-350-3940
営業日:金 土 日 月営業時間
【3月~10月】
11:00~17:00(ラストオーダー16:30)
【11月~2月】
11:00~16:30(ラストオーダー16:00)
※駐車場あり